生まれてこの方、「先端ってどこ?」という疑問を持ったことがありませんでした。しかし、日中特許翻訳(正確には、日本語の特許明細書)に触れるようになって、自分の常識を疑わざるを得ない場面に度々遭遇します。

さて、日本語で言う「先端」とはどこでしょうか?

私が解説します

Y.Y. | 日⇔中特許翻訳者
主に日⇔中特許翻訳(出願用明細書、特許公報、逆翻訳、中間書類など)を担当しています。特許事務所の翻訳部門での勤務経験があり、特許翻訳業務に携わってもうすぐ10年目になります。正確で自然な訳文を求めて日々精進中です。
【資格】日本語能力試験(JLPT)1級、知的財産翻訳検定試験 第1回中文和訳 合格

日本語における「先端」の定義

まずは、「先端」の定義を改めて見てみましょう。

せん‐たん【先端】

1 長い物のいちばんはしの部分。とがった物のさきの部分。「棒の—」「錐(きり)の—」「岬の—」
2 時代・流行などの先頭。先駆。「流行の—を行く」
(引用先:weblio辞書

明細書では基本的に1の意味で使用されています。 「とがった物のさきの部分」に関しては、一義的な解釈しかできないためここでは取り上げませんが、日本語から翻訳する際に厄介なのが、冒頭の「長い物のいちばんはしの部分」の解釈です。

どっちが先端?

たとえば、明細書に以下の例があります。

「図1に、シリンダ30とピストン40の断面図を示す。ピストン40は、不図示のコンロッドを介してクランクシャフトに接続されている。ピストン40の内部には、径方向外側に向かって延在する第1冷却流路41が設けられている。第1冷却流路41の先端部は、ピストン40の下部に開口する第2冷却流路42と連通している。」

【図1】

第1冷却流路41は幅が一定であり、「長い物のいちばんはしの部分」という定義だと、内側と外側の端部のどっちも先端になり得ます。ここで、このまま中国語に翻訳したら日本語同様不明瞭な記載になってしまいます。もし外側の端部を限定して言うのであれば、「(径方向)外端部」のほうが分かりやすいかもしれません。

また、次の例があります。 「脚立10のロック機構15は、可動リンク15aと可動リンク15bとを備える。可動リンク15aは、ラダー11aと枢動可能に連結され、可動リンク15bは、可動リンク15aの先端部と枢動可能に連結される。可動リンク15bは、ラダー11bと係合可能な先端部を有する。」

可動リンク15aも可動リンク15bも幅がほぼ一定であり、「長い物のいちばんはしの部分」という定義だと、右側と左側の端部のどっちも先端になり得ます。ただ、図面を見てみると、可動リンク15aも可動リンク15bも一端が固定され、固定されていない方の端部が「先端」とされているようです。この場合も、このまま中国語に翻訳したら日本語同様不明瞭な記載になってしまいます。「先端」よりも「自由端」や「固定されていない端部」のほうが分かりやすいかもしれません。

まとめ

このように、日本語明細書において、自分の常識を覆すような表現に遭遇したら、字面に惑わされず真の意味を追求することが大事だと思います。

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