特許調査を外部の特許調査会社に依頼する際に、まず突き当たるのが
「どの調査会社に依頼すればいいのか。。。」ではないでしょうか。
ネットで検索すれば特許調査会社はいくらでも見つかります。その中から良い特許調査会社を選定するのは難しいものです。
しかも、この「良い特許調査会社」という基準を持っていないと尚更難しいもの。 特許調査のことをよく理解している私であれば特許調査会社をこう探す、という内容をお伝えします。
Y.T. | 特許調査 サーチャー
精密機器メーカーで9年間、特許技術者として様々な製品の特許・意匠の出願・権利化や、他社特許対応、そして模倣品対策を通じて、多くの発明者と接してきました。現在は自社のサービスとして特許調査や特許分析を行っています。【資格】知的財産管理技能検定2級、AIPE認定 知的財産アナリスト(特許)
特許調査会社を探すおすすめの手順
簡単に結論からお伝えすると、下図の手順で特許調査会社を探すのをおすすめします。
この記事では、上記手順に沿ってそれぞれのポイントを順に詳しく解説していきます。
また、気になる納期や費用についてもご説明します。
候補を探す:特許調査会社を探すのにおすすめの情報源4つ
1. 出願明細書の執筆を依頼している特許事務所からの紹介
日頃から特許出願でお付き合いのある特許事務所があれば、その特許事務所の方に相談してみるのが良いです。 特許事務所の方は色々な方々との繋がりを持っています。出願を行う際には特許調査も必要ですので、その繋がりの中には特許調査会社もあります。もちろん弊社も特許事務所からご紹介いただくことがあります。
さらには、日頃からお付き合いのある特許事務所であれば、依頼者であるアナタやアナタの会社のこともよく認識しています。そのため、アナタや会社にとっての「良い特許調査会社」もある程度想定したうえで信頼性のある情報を提供してもらえるはずです。
2. 特許庁の「特許情報提供事業者リスト集」から探す
特許調査であればこの「特許情報提供事業者リスト集」にある【2.調査・検索サービス】から特許調査会社のリストを閲覧することができます。
特許調査会社のリスト、というとソースが多く選定が大変、と思われるかもしれませんが、そこは大丈夫です。各調査会社の情報をとりまとめたリストになっていますので、効率的な調査会社の選定に役立ちます。
リストには、各調査会社のサービス内容や特徴・アピール内容が記載されています。また、各調査会社ホームページへのリンクもありますので、気になった調査会社があればホームページに飛んで詳細を簡単に確認できます。リストを見て各社の特徴を比較しながらスタイルにあった調査会社、希望したスキルを持った調査会社に絞り込んでいけます。
3. 知財業界の人に紹介してもらう
特許事務所のツテを当たってもらう方法をはじめにご紹介しましたが、ここではご自身のツテを当たるという内容です。
職場の上司や先輩・同僚もそうですが、ここは既に相談済みという前提で、社外に目を向けます。転職して他社や他の知財関係の会社に移った知人、セミナーで知り合った人や講師の方、自社で使っている特許ツールのベンダー、知財や技術の業界にある各協会の会合や研修で知り合う方々など。業界の方であればアナタと共通の課題を持っていることが多いものです。「良い特許調査会社はどこか」というのもそうです。既に特許調査会社を探した経験のある方から紹介していただけることが多いです。人脈の深い構築にも結びつきますので検討の価値アリです。
選定ポイント:特許調査会社を選ぶときのポイント4つ
さて、先述の通り特許調査会社の情報ソースとしてはいくつかあります。ただし、その情報だけでは決めることはできません。指標を持つことが大切です。例えば以下のようなものが指標として大切なポイントとなります。
1. 実績
「こんな企業から特許調査をご依頼いただいています」、「特許庁の競争入札案件に応札しています」、「顧客からの依頼リピート率が○○%」など、過去に信頼のある内容での実績があれば特許調査会社として安心です。更には、「経験がある」というだけではなく「経験を重ねている」というところが重要かと思います。
2. 得意な分野
特許調査会社の得意とする技術分野が自社の技術分野と一致するか。そして一番良いのは対応する技術分野のスペシャリストであることです。この場合にはサーチャーがその技術分野のいわゆる「土地勘」を持っているため、かなり信頼度が高くなります。
特許調査会社のホームページ上では、得意(実績が多い)な技術分野はページの上の方に記載されていることが多いですし、手厚く記載していることが多いため、その辺りで判断できます。また、スペシャリストではなかったとしても経験を重ねているサーチャーであれば「土地勘」を補いながら調査を行っていけるので、大まかな技術分類が外れていなければ問題無いと言えます。
3. 進め方
ここはアナタのスタイルに一致するのかどうか、あるいはスタイルに対応してもらえるのかどうか、ということです。以下に例を挙げますが、これらはどちらが良い・悪いではありません。戦略や事業など自社のスタイルに対して一致するかどうかということになります。
- 提案をして動いてもらえる/指示に合わせてくれる
- 打合せをしたりサーチャーと話をしたりしやすい/最低限のやりとりだけでお任せできる
- 事前に検索式をフィックスする/状況に合わせて検索式を変えつつ進める
- 自社の報告書フォーマットに対応してくれる/独自の報告書フォーマットがある
このような進め方のスタイルにミスマッチがあると「この特許調査会社は良くない」となってしまうように思います。調査結果という見える要素以外に感じる要素としてここは大きいです。
本来の目的に合わせた調査
上述した「進め方」についてです。本当のところは、①~④で挙げた内容について戦略や事業を把握した上で最適なスタイル・進め方を提案できる特許調査会社が「良い特許調査会社」と言えます。何故なら、特許調査を行うこと自体が目的ではないからです。本来の目的は、出願前調査であれば強い有効な特許を取得することが目的だということです。よって、目的のために柔軟に有効な手段を選択して提案するのが「良い特許調査会社」といえます。
4. 特許検索競技大会での実績
2007年からスタートした、日本で唯一の特許調査の実務能力を評価する大会。
それが特許検索競技大会です。
知財業界での特許調査の重要度は増しています。これに応じて大会参加者数も増加しています。
そしてこの特許検索競技大会では、一定のレベルをクリアした際には認定証(ゴールド認定・シルバー認定・ブロンズ認定)も交付されます。
認定されるのは、
ゴールド認定:上位4%
シルバー認定:上位10%
ブロンズ認定:上位20%
と、なかなかの狭き門と言えます。
認定を受けた人の知識とスピード、調査能力は相当に高いもので、調査スキルの高さはまさに折り紙付きと言えます。そのため、特許検索競技大会の認定履歴の有無は指標として大変参考になるものと思います。
ちなみに当社の認定履歴は、
2022年:シルバー認定2名
2019年:ブロンズ認定1名
2018年:ゴールド認定1名
2016年:シルバー認定1名
となります。
特許調査の費用と納期について
依頼する側としては気になるのが費用と納期です。ここは難しいところです。出願前調査なのか無効資料調査なのかといった調査の種類や納品物の内容などの不確定要素が多いので、相場といっても幅があり参考にするのは難しいかもしれません。特許調査会社によってはホームページに目安を記載しているところもありますので、それを参考とする方法もあるでしょう。
しかし、一つの特許調査についても細かい仕様が異なるのでホームページの記載だけを見て判断するのは難しいです。例えば、出願前調査で新規性しか調査しないのか、進歩性まで見て調査をするのか、検索式はしっかりとしたものを作ってもらえるのか、などはやはり各特許調査会社の話を聞いてみなければ分からないことがほとんどかと思います。
料金が高いところの方がかえって安くついた、ということは多分にあります。同様に、納期までは長かったが社内での後作業が少なく済み全体として早く調査が完了した、ということもあります。
目的と予算を考慮して特許調査会社と調整するのが良いと思います。
まとめ
今回ご紹介した「特許調査会社の選び方」を改めておさらいしておくと、下の図の通りになります。
特許調査は、早くて安いというだけで選べば良いわけではなく、どれだけ自社の進め方や目的にマッチしているかが重要となります。
この記事に記載した内容を参考に特許調査会社を探していけば、効率的に自社にマッチした特許調査会社、すなわち自社にとって「良い特許調査会社」を探せると思います。そして、最後はやはり特許調査会社に直接話を聞いてみることになりますので、是非お気軽に特許調査会社に問い合わせしてみましょう。
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