「調査会社に特許調査を依頼してみたい。だけど依頼の進め方が分からない」
私がメーカー知財部で業務を行っていた頃に、そんな想いで特許調査を行っていました。
皆さんはいかがでしょうか?
いまは特許調査を受ける側となっている私が、依頼する側・依頼を受ける側の両方の目線で、特許調査を外注する際に必要な準備とコツをお伝えします。
Y.T. | 特許調査 サーチャー
精密機器メーカーで9年間、特許技術者として様々な製品の特許・意匠の出願・権利化や、他社特許対応、そして模倣品対策を通じて、多くの発明者と接してきました。現在は自社のサービスとして特許調査や特許分析を行っています。【資格】知的財産管理技能検定2級、AIPE認定 知的財産アナリスト(特許)
準備するもの①:特許調査を実施したい技術を説明するための資料
『特許調査を実施したい技術』としては、例えば以下のようなものがあるかと思います。
- 出願しようとしている技術
- 開発しようとしている技術
- 実施している技術
- 動向を知りたい技術
- 無効にしたい特許の技術
(ここで言う『技術』は、構造・構成、組成、あるいは商品、ソフトウェア、サービス、とも言えます。)
そして、 この『調査したい技術』を調査会社に伝えることができる資料があると良いです。
例えば以下のようなものです。
- 図面や概念図、イラストなど
CAD図、エクセルで描いたもの、手書きでも大丈夫です。 - 説明文
パワーポイント、ワード、手書きでも大丈夫です。 - 現物や写真
現物があれば伝えやすいと思います。
ただし、物によっては見るのが難しいものあります。そのような場合は写真でも良いです。 - 公報(公開公報・登録公報)や出願用の明細書
関連した技術が記載されている公報、あるいは出願しようとしている明細書などです。
これらは『調査したい技術』をわかりやすく・正確に伝えるために使います。
説明や理解の確認を怠らない
打合せを行う場合は、事前に調査会社に資料を送付しておくと、当日は深い議論ができるためスムーズです。ただし、より正確な調査を行うためには、次のようなことが重要です。
「これは分かるでしょう」、「普通はこうだから」と思う部分でも省略せずに説明や理解の確認を行うことです。ちょっとした内容の省略でも、双方で思わぬすれ違いが生じてしまい、「意図する調査が行われなかった」という事態に繋がってしまいます。このような場合は、時間とコストが無駄となってしまいます。少しの手間が正確な調査に繋がります。(職場の同僚と一緒に仕事をするときと一緒ですね。)
最近ではオンラインで打合せを行う機会が増えています。オンラインで打合せする場合は、資料を画面共有することで、より効果的に双方の認識を合わせることができます。
調査を行うことに至った経緯を伝える
「何をしたいのか」、「どのような事情があって調査をしたいのか」。こういった『経緯』を含めて調査会社に伝えることが重要です。ピンポイントだけを見て調査を行うよりも、前後の背景を知って調査を行うことで、より効果的な『使える調査結果』に繋がります。サーチャーは、経緯を知っていれば、その経緯を踏まえて調査を行い、経緯を踏まえた判断を行います。当然結果は変わってきます。(これも職場の同僚と一緒に仕事をするときと一緒ですね。)
準備するもの②:特許調査の仕様に関する情報
どのような仕様で特許調査を行うのか、具体的には以下の情報があるとスムーズです。
ただし、これについては事前に分かっていれば良いですが、分からない場合もあるかと思います。そのような場合には、調査会社によるヒアリングにより仕様をフィックスしていくことになるので大丈夫です。
- 調査種別
いずれの調査であるか。- 出願前調査
- クリアランス調査(FTO調査)
- 無効資料調査
- 技術動向調査・観点スクリーニング
- パテントマップ分析
各調査種別の詳細についてはコチラをご参照ください。
- 調査国
日本に出願されている特許を探したい。あるいは海外に出願されている特許を探したい。海外であればどこの国か(US、EP、CN、WOなど)
- 調査対象
多くの場合は、調査対象は特許かと思います。つまり、どのような特許出願があるのかを探す調査になるかと思います。ただし、化学やバイオ・医薬の分野では、非特許文献(論文)も調査対象として検討する必要があります。
- 納期
『何日までに』、『今月中に』、あるいは『○○月中旬』までに、など。
もし次のような理由があれば、そのスケジュールに基づく日程調整が重要になります。- いつ出願するのでそれまでに
- 社内で予定している会議・報告会までに
- 製品がプレス発表される前に
- 中間納品が必要か
- ご予算
案件によっては、想定より規模が大きくなってしまう場合もあるかと思います。そのような場合は、ご予算に応じて複数のプランをご提案させていただきます。事前に、案件の重要度などに応じた予算感をお持ちでしたらスムーズです。
まとめ
「はじめての外注」、「はじめての調査会社」、「はじめてのサーチャー」など、よく分からない相手に対して仕事を依頼するのはなかなか気が引けるものです。遠慮したり、言葉少なとなったりしがちです。でも大丈夫です。AIBSには、私のようにメーカー知財部門に所属していた経験のあるメンバーの他、開発部門、調査部門、あるいは特許事務所に所属していた経験のあるサーチャーがいます。つまり、依頼者側のことをよく理解しているサーチャーです。
ぜひお気軽にご相談ください。
依頼者と調査会社の打合せの現場では、実際にどのようなことが行われているのか。
上記ポイントも踏まえた内容の記事を次回以降で書きたいと思います。