皆さん、外国出願してますか?
自社の事業を守り、持続、発展させるうえで、特許権は強力なカードの1つとなるでしょう。しかし、外国で特許出願をして発明を権利化することは、手間や時間の掛かるタスクです。
そんな手間のうち、翻訳(日英)の負担を少しだけ軽くしてくれるサイトがあります。
O.K. | 特許翻訳・チェッカー
半導体設計会社で組込みソフトウェアの設計に従事する傍らOSやプログラミング言語の専門書、音声符号化技術の規格書の翻訳に取り組んだのち、電機メーカーの知財部門で技術担当として5年間国内外の特許出願・中間処理に携わりました。AIBSで特許翻訳に関わるようになってから干支が2巡目に入ったところです。お客様に満足していただけるよう日々精進してまいります。
日本人の外国出願件数と内訳
外国出願する際は、米国と中国を対象とする機会が多いのではないかと思われますが、実際はどうなのでしょうか。
日本の特許庁は、知的財産をめぐる国内外の動向と特許庁における取組について取りまとめた特許行政年次報告書をインターネット上で公開しています。
その中に、「日本人による主要特許庁への特許出願件数」というデータがあります。
ここで言う「主要特許庁」とは、米欧中韓の特許庁です。
※日米欧中韓は、2007年に五庁(IP5)という枠組みを創設しました。日米欧中韓の当局への特許出願件数は、全世界の特許出願件数の8割以上を占めているそうです。
2024年度版の報告書によると、2022年に日本人が行った米欧中韓への特許出願は、157,401件だったそうです。
内訳は、次の通りでした。
- 米国:76,706件
- 中国:45,259件
- 欧州:21,576件
- 韓国:13,860件
なお2023年に日本人が行った5庁への特許出願の内訳は、米国/73,268件、中国/-(未計)、欧州/21,520件、韓国/14,186件でした。
報告書には「日本から海外への特許出願件数の割合(2022年)」というデータも載っていますが、実に40%が米国出願でした。
このように、米国は主要な出願先と言えます。
米国出願の情報開示義務とは
ところで米国出願にはユニークな規則があることをご存じでしょうか。
米国出願の関係者(発明者、出願人、代理人など)には、当該出願の特許性に関する情報を誠実に開示する「情報開示義務」が課せられます(米国特許規則§1.56)。 出願の関係者は、当該出願の特許性に関して自身が知り得た情報を開示するために、情報開示陳述書(Information Disclosure Statement、IDS)を米国特許商標庁に提出します。
情報開示義務の例
では、どのような情報が開示対象となるのでしょうか。
日本国内に居住する人(発明者・出願人)が国内で完成させた発明を日本と米国で権利化するために、日本の特許庁に特許出願(出願A)をし、その出願の優先権を主張して米国に外国出願(出願B)するというケースを考えてみます。
日本で発明を権利化するには、出願Aの特許出願と同時または特許出願から3年以内に、審査請求をする必要があります。日本の特許庁に対して審査請求をすると、概ね10ヶ月で最初のアクションがあります。
※早期審査制度やスーパー早期審査制度という仕組みを利用すると、もっと早く審査してもらえます。
ここで言うアクションとは、特許庁から出願人への各種通知(主に拒絶理由通知や特許査定通知)です。
一方、米国には審査請求制度はありません。出願Bを特許出願すると審査待ちの行列に入り、いずれ特許性が審査されます(出願からファーストアクションまでの期間は平均14.7ヶ月(FY2019))。
上記のケースでは、出願人にとって、先行する出願A(日本出願)に関する各種通知は、「出願Bの特許性に関して自身が知り得た情報」となります。つまり、出願人は、日本の特許庁から届いた出願Aに関する通知(例えば拒絶理由通知)を英語に翻訳して米国特許商標庁に提出する必要があるのです。
法令外国語訳ホームページで特許法の条文を調べる
さて、拒絶理由通知書には、拒絶の根拠となる特許法の条文や、拒絶の理由が記載されています。
拒絶理由通知書のサンプルを見てみましょう。
このサンプルでは、特許出願の拒絶理由が、それぞれの根拠条文(新規性/29条第1項第3号、進歩性/29条第2項、明確性/36条第6項第2号)とともに記載されています。
これを翻訳するのはちょっと大変だわ…
と思われた方に、耳寄りな情報です。
日本の法務省は、「法令外国語訳ホームページ」を公開しています。
このサイトでは、今のところ法令の英訳が利用可能です。
トップ画面の「法令名で検索」というテキストボックスに法令名として「特許」と入力して検索をクリックすると…
法令検索画面に遷移します。
ここで「特許法」のハイパーリンクをクリックすると、特許法(Patent Act)の原文(和文)と訳文(英文)が対訳形式で表示されます。
拒絶理由通知書のサンプルに記載されていた特許法第29条や第36条を見てみましょう。
「特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明」や「特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が前項各号に掲げる発明に基いて容易に発明をすることができたとき」など、拒絶理由通知書に記載されている文言が見つけられます。
まったくのゼロから翻訳するよりも幾分負担が軽減するかもしれません。
まとめ
今回は特許法を例に挙げて「日本法令外国語訳データベースシステム」を紹介させて頂きましたが、他の法令の英訳も提供されていますので、さまざまな業務で利用できるサービスだと思われます。
ただし、「法令外国語訳ホームページ」の利用には注意が必要です。 トップページには「ご利用上の注意」が記載されています。
法令の訳文は法律の内容理解を助けるための参考資料だということを念頭に置いて、上手に活用したいですね。
AIBSの特許翻訳サービス
外国出願手続で最も費用がかかるのは「翻訳費用」ではなく「現地代理人費用」です。
不必要な拒絶対応を減らして現地代理人の工数を抑制することがトータルコストの削減につながります。
AIBSは、和文明細書に引きずられない正確・明瞭・簡潔な翻訳を提供することで、
1.外国出願のトータルコスト削減
2.外国出願に関わる企業・特許事務所の方々の負荷軽減
に貢献します。
AIBSの特許翻訳サービスの詳細はこちらをご覧ください!