さて、皆さん、これって、なんて呼んでいますか?
おそらく、ほとんどの人が「プチプチ」と答えるのではないでしょうか。
それぐらい世の中に浸透している呼び名ですが、調べると、「プチプチ」というのは、川上産業株式会社の登録商標で、このような製品(気泡緩衝材)にたいして、数社が独自に名称をつけています。
おもな登録商標
(川上産業株式会社)
ミナパック® (酒井化学工業株式会社)
キャプロン® (株式会社ジェイエスピー)
ちなみに、各社ともそれぞれの英語名称をつけているようです。
PUTIPUTI®
Minapack
CAPLON™
もともと、この製品は、アメリカのエアープロダクツ社の技術者2人により、偶然に開発されました。その後、2人はシールド・エア・コーポレーション (http://sealedair.com/)を1960年に設立し、この製品を「Bubble Wrap®」という英語名で商標登録しています。
多少の製品仕様の差はあるとは思いますが、同じような製品に何種類もの英語名称があることになりますね。
こりゃ困った。
たとえば、こんなトリセツの中にこんな一文があったとしましょう。
日本語:
欠陥のあった製品を保証センターに返却する際には、損傷を防ぐためにプチプチTMを使用して、製品を保護してください。
英語:
When returning a defective product to our warranty center, please protect it by using PUTIPUTI® to avoid any damage.
せっかく、英語名まで考えられていますが、日本では入手できても、現地では入手できない場合がほとんどなのです。
かといって、アメリカ国内で広く知れ渡っているBubble Wrap®を使用するというのも問題があります。
したがって、このような翻訳の際には、お客さまからの指定がないかぎり、登録名称を使用しないで、できるかぎり一般名称protective wrapを使用することが望まれます。
When returning a defective product to our warranty center, please protect it by using protective wrap to avoid any damage.
どうしても、Bubble Wrap®を使用したい場合には、
When returning a defective product to our warranty center, please protect it by using Bubble Wrap® or the equivalent to avoid any damage.
“or the equivalent” (または同等品)を追加するのがいいかもしれません。
このように、世の中には、結構、日頃から親しんでいるものが一般名称ではなく、実は登録商標だったということがよくあります。
「宅急便」、これは、ヤマト運輸の登録商標なんですね。
ときどき、別の運送会社の人が、「■○さーん、宅急便ですよー」といって届けにくるほど、もはや一般名称と化しています。一般的には、「宅配便」と呼ぶのが正解のようです。
宅配便が普及していなかった明治~昭和50年の時代には、家庭に届けられるのは、「郵便小包」または、たんに「小包」と呼ばれていました。
「■○さーん、小包ですよー」といって、届けられたものでした。
これとは別に、荷物が駅までしか届かない「鉄道小荷物」というものがあって、駅まで荷物を受取にいったものでした。
当時と比べれば、いまは家に居ながらにして集荷もしてくれるし、何回でも再配達してくれます。どれだけ便利になったことか、感慨ひとしおです。
ちょっと、話がそれてしまいましたが、翻訳時の注意として、登録商標なのか一般名称なのかを意識することが大切であることを、「プチプチ」、いや「気泡緩衝材」から再認識させられました。
T.K.