秋、思い出すこと

10月も半ばを過ぎました。秋らしい日もあれば、まだ夏の暑さが残る日もある、というような日が繰り返されています。気候変動が話題になることも多いのですが、季節の変わり目というのはこんなものかもしれません。こうした日々の積み重ねを経て秋が深まっていくのでしょう。

私が、「秋だ!」と最初に認識するのは「彼岸花」を見たときです。9月のお彼岸の頃に咲き始める赤い花で、田んぼの畦や土手にまとまって咲く姿はとてもきれいです。そんな彼岸花を見ると思い出すことがあります。大学4回生のときの就職活動の記憶です。私が学生だった頃、就活は夏から秋にかけて行われていました。私は、少し出遅れてしまい焦燥感を持ちながら活動していました。内定もなく、未来への不安で胸がいっぱいだったことを覚えています。彼岸花の鮮やかな色と独特の形がその時の感情と結びつき、今でも強く記憶に残っているのでしょう。最終的には無事に就職でき、不安があってもしっかり前を向いて取組めばなんとかなる、と考えられるようになりました。毎年、彼岸花を目にすると当時の感情や学生時代の情熱が思い出されます。


もうひとつあります、それは「キンモクセイ」です。彼岸花が終わった頃に咲き始め、強烈な香りを漂わせます。キンモクセイの香りで「秋だな」と感じるとともに思い出すのは、同じく学生時代のことです。当時の私は、いわゆる「貧乏学生」でした。暖かい時期はTシャツとジーンズだけで過ごしていましたが、キンモクセイが咲く頃になると肌寒くなり、それでもTシャツで我慢していた日々が思い出されます。下宿の近くに大きなキンモクセイがありました。登校時にはその香りの中を、寒いなと思いつつも気合いを入れて自転車で通り抜けていました。冬を越すためのセーターは一応持っていましたが、ファッションには疎く服の数も少なかったため、寒さを我慢しながら過ごしていたあの頃のことを思い出します。そして何故かいつも自転車に乗っている姿と共に記憶が蘇るのです。

自宅のキンモクセイが数日前から満開になり、香りが漂っています。しばらくはこの香りに包まれながら、学生時代を思い出しつつ出勤する(今は自動車ですが)ことになるでしょう。

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